2020-05-22

ケリ・ヒルソンが語る、オマリオン“Ice Box”のとある真実



ジョンテイ・オースティンが定期的にやっているトークライブ@IG Live〈The Mastery〉に、ケリ・ヒルソンが登場。インタビューに応じました。

クラッチ結成のエピソードからジョンテイとの出会いまで色々語られていましたが、面白かったのがオマリオン“Ice Box”のエピソード。
“Ice Box”にティンバランドの声は一切入っていない、と明かしました。ティンボに聞こえる声はすべて、クラッチのひとり、ジークことイジーキエル・ルイスによるものだそう



ティンバランドらがプロデュースし、クラッチがソングライティングを手がけた“Ice Box”。言われてみればクレジット上も、backing vocalsに記載があるのはPatrick "J Que" SmithとEzekiel "Zeke" Lewisの2名のみ。
なぜティンボの声と思い込んでしまっていたのか……?と一瞬考えてしまいましたが、ミュージック・ビデオでティンバランドがリップシンクしているからでした。そりゃティンバランドだって思いますわ。場合によっては、featuring Timbalandの表記があることもありましたね。



では、ケリ・ヒルソンが“Ice Box”について振り返る場面を見てみましょう。抜粋してご紹介します。



“Ice Box”ね。

その頃、KPがクラッチのマネジメントをしていて。コワン・プレイサーのこと。
クラッチが結成されたのが02年か03年? ティム(ティンバランド)と一緒にやるようになったのが03年頃で……そうそう、私、大学を3年の時に辞めたから(合ってる)。2000年に高校を卒業して、ティンバランドと一緒にやるために大学を辞めたんだよね。マイアミの彼の家に住んで。クラッチはその1~2年前に結成していたわけ。
それでKPは当時まだレーベルにいたと思う。KPは同時にクラッチのマネジメントをしていて、それからマリオのプロジェクトにも関わってた。
*Kawan "KP" Pratherは、ダンジョン・ファミリー一派でもあったアトランタのヒップホップ・トリオ=PAの元メンバーで、その後、A&Rとして主にLaFaceやArista Recordsで活躍した人物。アウトキャストや、アッシャー、ジョン・レジェンドらのアルバムを手がけていた。“Ice Box”が収録されたオマリオン『21』ではエグゼクティヴ・プロデューサーを務めている。

ある時、ティンバランドがトラックを送ってくれて。ロイヤル・コートが手がけたもの。ロイヤル・コートはティムのキャンプ。キング(・ソロモン)とジョン(・スピヴァリー)、当時ティムの下で働いていたプロデューサーたちね。

私は最初“Cold”って曲を書きたいなって思って、そしたらJ・キューが曲名がダサいってことで、色々と考えた結果、“Ice Box”ってタイトルになったの。それでフックから書き始めたんだ。

その頃、私はティムと一緒にやっていたから、ティムの声っていうものをよく知っていたわけだけど。
ここで秘密を明かしましょう。ティムの声は“Ice Box”には一切入ってないの。みんなティムだと思ってるけど。「I'm so cold, I'm so cold♪」(モノマネしながら歌う)

(「あれ、ティムじゃないんだ?」と訊かれ)
ティムじゃない。ティムの声みたいに聞こえるけど、(ひとりで歌う)ブリッジのところの声もティムじゃない。

あのトラックはティムが送ってきたものだし、ティムもあの曲に参加したいんじゃないかと思って。それで「ティムならどうするだろう?」って考えて、私はティムになりきって。最終的に私は、“コーチ”をしたの。ジークがブースに入って、私が彼のコーチになって。「ティムはもっと鼻声だ」とか言って、めちゃくちゃ頑張ったの。ティムっぽい声になるように。あくまで(ティンバランドのための)デモのつもりでね。
だけどティムがこれを聴いた時……彼にメールを送ったのを覚えてる、「こういうパートを作ったからレコーディングしてくれ」って。で、彼がスタジオに来たら、顔をしかめて「俺の声みたいだな。そのままキープしといて」だって。思ってた反応と違ったわけ。私たちはあなたが歌うことを想定して書いたから、あなたに歌ってほしいんだ、みんなを騙したくない。そう思ったんだけど……。まさか彼がそのまま「featuring Timbaland」を放っておくとは思わなかった。「Omarion featuring Ezekiel Lewis」じゃなくてね。
エンジニアと、これがティムの使っているプラグインで、こんな風にああいう声を作ってるってやり取りしながら頑張ったの、思い出すなぁ。



このIG Live中には、盟友J・キューもコメント欄に降臨しており、ケリの指導によるジークのモノマネを聞いたティンバランドの感想について、「いや、彼は『俺よりいい』て言ったんだよ😂」と指摘する場面も。



いずれにせよ、わざわざ自分がレコーディングする必要がないと感じたのでしょうね。しかし、ティンバランドが歌うためのデモだったのが、似すぎていたために(?)そのまま使われることになってしまったとは……。


ちなみにオマリオンの“Ice Box”は、『クロノトリガー』の「みどりの思い出」をサンプリングしていると言われていますが(ノークレジット)、さすがに話はそこには及びませんでした。まぁケリはソングライターですから、トラックについては語れることも少ないでしょうから仕方ないですね。




なお、ケリ・ヒルソンは、気になる新作についても少し話していたのでご紹介しておきましょう。

ケリは、『L.I.A.R. (Love Is A Religion)』と題されたニュー・アルバムを準備中としながらも音沙汰が途絶えた状態が続いていましたが、数年前からアーティストとしての本格的な再始動を仄めかし、2018年にはIG Liveの中で音源をチラ聞かせ。昨年3月には、デビュー・アルバム『...In A Perfect World』の発売10周年に合わせて「待つのは終わり。準備できてる。2019夏」とコメントするも、何もなく……という感じでしたが。

ジョンテイから今後について訊かれると、はっきりと新作を制作中であると回答しています。以下、引用しておきましょう。

アルバムを完成させようとしているところ。もうすぐ、もう間もなくね。今言えることはそれだけ。
っていうのもこの数年、偽のプレスリリースのことで責められることがあって。本当に発表をしたのは去年、っていってもプレスリリースではなかったけど。ともかく楽しみ。まだ制作中だけど。
※2016年春、『Love Is A Region』という新作から新曲“Again”が近々発表される予定、というプレスリリースが出回り、多くのメディアが取り上げたものの、ケリは「フェイク」だと否定。『L.I.A.R.』というタイトルのアルバムを制作中で、“Again”という楽曲の存在も事実ではあると認めたものの、まだ発表できる段階ではないと説明した

今言えるのは、新しい“クレヨン”のセットで作ってるってこと。それが楽しいの。新しい“色”で遊ばなきゃって思って。進化してるってことね。レベルが上がったとか下がったとかいう意味ではなくて、別物になってるということ。それがすごく楽しくて。

いつもの面子ともやってるし、他にもアンドレ・ハリスともやってる。スペシャルな曲、スペシャルな音楽ができたからみんなに聴いてもらえる時が楽しみ。
アルバムに参加したすべてのプロデューサー、すべての人たちにシャウトアウトを。ニードルズもそのひとり。もちろんポロウ(・ダ・ドン)も参加してる

ケリは今年4月、ガーナのアフロ・ポップ系アーティスト=ストーンボーイの新曲“Nominate”に参加、彼の最新作『Anloga Junction』で聴くことができるほか、ミュージック・ビデオでもその姿を見ることができます。
この調子で年内に新曲、聴けるでしょうか。

このジョンテイ・オースティンによるケリ・ヒルソンのインタビューは、ジョンテイのIGTVでアーカイヴされてますよ。(1), (2)