2020-05-23

ブライアン・アレクサンダー・モーガン、SWV新作への参加&未発表音源リリース予定を明かす



SWVの数々の名曲を手がけたことで知られるブライアン・アレクサンダー・モーガンが、インディを中心に良質なR&Bを語るYouKnowIGotSoul.comの公開インタビュー@IG Liveに登場。

当時のSWVの制作エピソードも話していましたが、一番最後に爆弾を落としました。

(SWVのニュー・アルバムに参加する予定は?という質問に対し)
もちろんだよ! マイメンのJ・ホワイトもね。カーディ・Bやメーガン・ザ・スタリオンをヒットさせた奴だ。Jと俺が一緒に組んでSWVのニュー・アルバムを手がける予定だ。クレイジー~♪ Jの感性光るビートに、俺のセンスが加わるってすごいことになりそうだろ? だから新作は、オーセンティックなSWVもありつつ、新しいヒネリも加わるんだ。素晴らしいものになると思うよ。

それから、俺のレーベルからSWVの未発表音源をリリースする予定だよ。数ヵ月以内に。これは、『BAM's Rare & Unreleased Remix』っていうプロジェクトなんだ。無駄になった古い音源や、これまで使われてこなかった音源、他の人に提供しようと思った音源とか。フィーチャリング・ゲストも予定しているんだ。ヤバいでしょ。

なんと、SWVのニュー・アルバムに、実に『Release Some Tension』以来20年以上ぶりにブライアン・アレクサンダー・モーガンが参加する予定とは! しかもこの新作に、J・ホワイトまで参加するという情報が。
J・ホワイトは、“Bodak Yellow”、“I Like It”といったカーディ・Bの大ヒットシングルや、メーガン・ザ・スタリオンの今まさにヒット中の“Savage”などを手がけてきたトラップ界の売れっ子中の売れっ子プロデューサーです。ティナーシェやラトーヤといった女性R&Bシンガーを手がけたこともありますが、SWVとの組み合わせはどんな感じになるんでしょうね。

そしてそして、ブライアン・アレクサンダー・モーガンの未発表&レア音源集。
実は少し前に、未発表音源やデモをSNSでシェアしてきたモーガン(なのでYTで検索すると色々出てきます)。コメント欄などで、これら未発表音源をまとめた作品(『BAM's Rare Remixed & Unreleased』が正式なタイトル?)の発表を仄めかしてはいましたが、本当に具体的にリリース予定だとは。
SWVの未発表音源があるというだけでR&Bファン注目の的となりそうですが、彼は元々、80年代にWarner Bros.と契約していたR&Bグループ(カシェイ・ドゥ・ヴォワ Cachét De Vois)からキャリアを始めており、彼のソロ音源あたりにも期待したいですね。

ちなみに彼のYouTubeチャンネルにはエリック・ベネイに提供した“Dust In The Wind”のデモ音源あり。自ら歌っているものです。このインタビューでも言及されており、「自分のデモに忠実に歌ってくれたから気に入っている」と話していました。






さて、SWVの制作秘話などについては以下に綴っていきましょう。




■ SWVを手がけることになるまで
元々、音源は人に提供するつもりじゃなかったんだ。自分のために取っておいてたから。ソロ・アーティストとしてやっていこうと思ってたからね。だから(楽曲提供は)本当に偶然だったんだ。
Warnerでのジェイ・キング時代に、ジェイの下で働いていたジェフ・ボウエンスって男がいて、こいつが俺のデモテープを持ち去ったんだ。“Weak”が収録されていたデモだよ。
*前述のように、モーガンは元々カシェイ・ドゥ・ヴォワというグループで活動していました。彼らは、クラブ・ヌーヴォーのジェイ・キングに誘われて1987年にWarner Bros. Recordsと契約。しかし、ヒットしなかったため契約を切られています

そしてRCAで働いていたケニー・オティーズが打ち合わせでLAに行った時に、オフィスで(RCAに移った)ジェフが“Weak”を流しているのを耳にしたらしいんだ。それで「何だそれは?」ってなって。俺がマーシャ・ウォッシュのプロデュースをしていたこともあって、ケニーは俺の歌声をよく知っていたから、「ちょっと待って、ブライアン・アレクサンダー・モーガンの声じゃないか」となって。
*マーサ・ウォッシュのデビュー・アルバム『Martha Wash』(発売は93年)でモーガンは“Give It To You”など数曲をプロデュース。この時のA&Rがケニー・オティーズだった

それでケニーから電話があって、「隠してたな! 俺がガールズ・グループを作ってるって話はしただろ。彼女たちにこの曲が必要だ」って。
でも俺は断ろうとしたんだ。これは俺のための曲だからって。でも彼がデモにいくらか金を払うと言ってくれて、まぁいいかなって。それでこの後に、アルバムを手がける話をもらったんだ。
ちなみにココはこの曲が好きじゃなかったんだけどね。




“Right Here”オリジナル・バージョン誕生秘話

“Right Here”のオリジナル・バージョンが出た時、あまりヒットしなくて。TLCのようにはいかないなって。アン・ヴォーグも人気だったし。ちょっとフッド色が強すぎるのかもって思った。
でも聞いてくれ、あの時ケニー・オティーズがもっと簡略化しろって言ってなければ――
あの頃俺はエリック・サーモンの大ファンで。だから俺は最初、めちゃくちゃヘヴィでファンキーなバージョンを作ったんだ。するとケニーが、「なんだこれは? ダメダメダメ、これはダメ」って。それで家に帰って、余計なものをそぎ落とした。本当にベーシックな要素だけを残して。当時流行ってたニュー・ジャック・スウィングとかとは全く対極のものになったんだ。“Funkin' For Jamaica”とか、俺の青春時代を思わせる感じにしたくて。だからベースをチョーキングさせてるんだよ。ボォーン、ウーンって。
それからメロディは単純に。フリースタイルみたいな感じで。でも曲を書いている時、常にココの声を考えてた。ココがどう歌えるか、ココの声がどう響くかをベースにして書いたんだ。(“Weak”のような)俺のために書いてたものと違って、あれは彼女のために書いた曲なんだよ。




“Rain”の元ネタを教えたのはレイラ・ハサウェイだった

「自分はベイビーフェイスのように、どんな人にでも曲を書けるというタイプじゃない」というブライアン・アレクサンダー・モーガン。
90年代前半に彼のスタイルを受け入れたのがレイラ・ハサウェイとアッシャーでした。
モーガンは、レイラの“Let Me Love You”(94年作『A Moment』の1stシングル)を手がけることになるわけですが、このレイラが、SWVの名曲のひとつ“Rain”の元ネタであるジャコ・パストリアス“Portrait of Tracy”をモーガンに教えた人なのだそう。
レイラはジャズの人で。ある時彼女に「ねえ、この人聴いたことある?」って言われて、かけてくれたのが“Portrait of Tracy”だった。あのドゥドゥドゥドゥドゥーフーウーウー♪を聴いた時、うわ、これ使ったらヤバいのできるんじゃね?って思いついて。

でも、レイラの“Let Me Love You”をやったのが1994年だけど、数年は(“Portrait of Tracy”のことは)忘れてたんだ。
それである日、シャワーを浴びている時に“Rain”のフックが突然“降って”きて。Rain down on me / Let your love just fall like rain♪ってあのフック全部がシャワーの中で一気に“降って”きたんだよ。その時、おいおいおい、もしこの思いついたフックのキー(音程)が、ジャコ・Pのあれと同じだったら……って。これはうまくいくって何かに教えられたかのように頭に浮かんで。
それでスタジオまで走って行って、ジャコのバイナルを取り出してプレイして。俺の頭の中に浮かんだ(“Rain”の)フックとまったく同じキーだったんだ。これは啓示だと思ったね。






“You're Always On My Mind”のアルバム・バージョンとシングル・バージョンが異なる理由

ファンから“You're Always On My Mind”について、アルバム・バージョンとビデオのバージョン(シングル・バージョン)が異なる理由を訊ねられました。

ブライアン・アレクサンダー・モーガンがココと一緒にリード・ボーカルを執るこの曲ですが、モーガンの歌声が、ミュージック・ビデオでも使用されているシングル・バージョン(Radio Version)では別のテイクが使われているのです。
シングル・バージョンでは、スティーヴィ風の節回しが強まったモーガンの存在感がさらに増し、フェイクも変わっています(特に終盤)。手間ですが1フレーズごとに聴き比べると面白いですよ。

いい質問だね。アルバム・バージョンの時は、ココは間違いなく、俺がやりすぎるのを嫌がってた。そしてそのことを俺はよく分かってた。だから俺は自分を納得させたんだ。

でも、シングルになるっていう時に、『もう一回やり直して、俺の本当のいつもの感じにしていい?』って訊いて。了解してもらったから、自分のパートを考え直したんだ。ビデオにも出るなら、アルバム・バージョンよりももっと面白い感じにしたくてさ。やらせてもらえて感謝。そういうわけで違うバージョンがあるんだ。






ドレイクをプロデュースすることになった経緯

SWVの制作エピソードではありませんが、SWV絡みであるとも言えるので、ボーナストラック的にご紹介しておきます。
ドレイクの2016年の大ヒット作『Views』にて、“9”のプロデュースに関わったことに驚かされましたが、この経緯についても話しています。

2011年にLAに移ってからDJカリルと知り合って。そのつながりで、カナダから来たチン(・インジェティ)って男と知り合ったんだ。それでチンから、俺がカナダでずっと支持されているって教えてもらって。SWVファンが多いってね。それも熱心なファンが。
でも理解できるんだ。なぜならカナダはデトロイトの隣で、デトロイトはSWVの熱烈ファンの多い街だから。クラーク・シスターズもね。
でもその時はカナダもそうなんだって知らなかった。そしてその人気が、40のような若い世代のプロデューサー、ソングライターにまで及んでいるなんて。ドレイクの(プロデューサーの)40だよ。彼らはヒップホップやR&Bのことをよくわかっていて、敬意を払ってる。そういうところが気に入ったよ。

それで、ドレイクの1st EPに参加したいなと思って。何てタイトルだっけ? DJカリルが参加してたから、一緒にやれないかと思ったけど、うまくいかなかったんだ。でもセカンド・アルバムだったかな、『Take Care』ってアルバムで、(SWVの)“Anything”(のリミックス版)をサンプリングしてくれたんだよね。“Shot for Me”という曲で。見事にやってくれたよ。あの使い方はドープだなって思った。

でも次もまたサンプリングは嫌だなと思って。40も俺の参加をすでに考えてくれていたみたいで。なぜなら、ナインティーン85ってプロデューサーがいるんだけど。dvsn (ディヴィジョン)ってグループもやってる。40から聞いたんだけど、ディヴィジョンで俺と一緒にやるのがナインティーン85の夢なんだって。
だから(“Shot for Me”を手がけた)40に連絡した時、彼はすでに俺のことを考えてたんだ。それで、後に『Views』になるネクスト・アルバムのために、何かオリジナル音源はある?って訊かれて。答えは「もちろん!」だよね。それで一緒に制作することになったんだ。





なお、最近は若いプロデューサーと一緒にやる機会が増えたそうで、リアーナの“Bitch Better Have My Money”を手がけたことで有名なデピュティと今やっているそう(デピュティは20年近いキャリアあるので若手というほど若くはないのですが……)。

また終盤には、チャーリー・ウィルソンと制作する予定があるということで、チャーリー・ウィルソンが採用するかも?というデモ音源を流す時間も(インスタにも上げていますが)。しっかりチャーリー・ウィルソンっぽく歌ってます。
そういえば、“Weak”って元々、大好きなチャーリー・ウィルソンを意識して作った曲だったんでしたっけ。

このブライアン・アレクサンダー・モーガンのインタビューは、YouKnowIGotSoul.comのインスタにアーカイヴ残ってますよ。

また、「“Right Here/Human Nature”を作ったのは誰か?」問題についてはこちらに詳しく。先月、ブライアン・アレクサンダー・モーガンが「あれはオールスターが作ったリミックスだ」と言い出してざわついた件をまとめています。今回のインタビューでもフォロー(?)の発言があったので追記しました。