2019-06-03

[new music] Blaque - 'Torch'

・Blaque - 'Torch' (Blaque/The Move Entertainment / 2019-05-31)



ブラック(・アイヴォリー)のお蔵入り作『Torch』がついにリリース。  Amazon  iTunes



TLCの妹分的な存在として、レフト・アイの後見を受けてナティーナ・リード、ブランディ・ウィリアムス、シャマーリ・フィアースという3人組で1999年に『Blaque』でデビューしたブラック。
R・ケリーら制作の“808”やインシンク参加の“Bring It All To Me”などがヒットとなり、映画『チアーズ!』にライバル役で出演するなどポップR&Bの新星グループとして注目を浴びたものの、2002年に発売予定だった2ndアルバム『Blaque Out』は音源流出などの問題でお蔵入り、そして2003年に発売予定だったElektra移籍作『Torch』も頓挫。翌年、映画『Honey』(邦題『ダンス・レボリューション』……)に提供したロドニー制作の“I'm Good”がそこそこ話題になったものの、2004年10月にElektraのボスだったシルヴィア・ローンが同レーベルを辞めてMotown社長に転身した影響もあって『Torch』は結局お蔵入り&Elektraをクビ、と不遇続きだった彼女たち。
2012年10月にはナティーナが32歳の若さで事故死し、遺されたブランディとシャマーリ(ニュー・エディションのロニー・デヴォーと2006年に結婚)で活動していましたが、『Blaque Out』の解禁(後述)に続いて、ついに3rdアルバム『Torch』が蔵出しされました。これは、デビュー・アルバム『Blaque』が1999年6月1日発売ということで、この発売20周年を記念したもの。

ブランディやシャマーリらも言及しているので一応はオフィシャル・リリースのようですが、音圧の低さだったり、“Ugly”に参加しているミッシー・エリオットの名前をフィーチャリング・クレジットに記していなかったり、本当にマスター音源? 権利関係をちゃんとクリアしてるの?といった疑問符も。大体、アルバムのリード・シングルだった“Ugly”自体は、以前からミッシーのフィーチャリング・クレジット入りで(当時の所属レーベルであるElektraより)ちゃんと配信されているんですけど、このElektra版と聴き比べると明らかに音圧が違う(苦笑)。アートワークも当時のものから、謎のイラストに変更されています。



まぁリリースされたことは、めでたいのはめでたいのですけれどね。
さて本作ですが、表記が変わっているものの、冒頭の“Blackout”は本来、前作の表題曲“Blaque Out”のロドニー・ジャーキンス(Rodney Jerkins)によるリミックス(という名の実質新曲)として知られているもの。当時はロード・タリク&ピーター・ガンズが参加していましたが、省略されていますね。ロドニーは他に“Helpless”、“Fall Back”を手がけているとされています。
リード曲“Ugly”を手がけたミッシー・エリオット(Missy Elliott)はメイン・プロデューサーの役を担っており、当時プロモ・シングルも出回っていた“No Ganksta”(表記が今回“Wanksta”に変更)の他にも、“Dat's Right”、“Freakazoid”、“Nappy Dugout”をプロデュースしていたとされています。“Ugly”は、マイアの“My Love Is Like...Wo”などでも組んでいたCKB・ミュージックことチャーリー・ビリアル(Charlie Bereal)とケニー・ビリアル(Kenny Bereal)がコ・プロデュースでクレジットされていましたが、他の曲も同じ布陣なんでしょうかね。
他には、“Love Em Down”、“It's Not Me”をリンダ・ペリー(Linda Perry)が、“If It Was Me”と“Her Name Is”はウォーリン・キャンベル(Warryn Campbell)が手がけたとされています。

今回のリリースにあたってブランディとシャマーリはYouKnowIGotSoulのインタビューに応じており、シルヴィア・ローン主導で制作された『Torch』はやはり「お気に入りのアルバムではない」と認めつつ、改めて聴くと「思ってたより悪くない」と素直に回答しています(笑)。ナティーナも生前、お気に入りのアルバムは『Blaque Out』だと言ってましたっけ。思い入れが少ないからこんな雑なリリースなのかな……



ちなみに2nd『Blaque Out』は、2007年に一度配信リリースされるも削除され、2011年になって“He Say, She Say”を省いた形で改めて再配信されました(こちらも残念ながらアートワークは変更)。
『Blaque Out』と『Torch』の音源は、ビヨパパことマシュー・ノウルズ率いるMusic World Entertainmentが握っていると後に報じられており(彼女たちは2002年のElektra移籍時にMusic Worldとマネジメント契約を結んだとされています)、実際に『Blaque Out』、そして昨年になってようやく配信された“He Say, She Say”は共にMusic Worldからのリリースとなっています。でも今回の『Torch』は違うんですよね……



なお、『Blaque Out』のリード曲“Can't Get It Back”は、イヴリン“シャンペーン”キングねたなサラーム・レミ版(オリジナル)が1年半後にミスティークに取られちゃったことで知られますが、解禁版『Blaque Out』に収録されているのは、表記こそ無いもののトラックマスターズによるリミックス版(という名の実質新曲)。ラップしているのは(こちらも表記は無いですが)ロイス・ダ・ファイヴ・ナインです。
サラーム・レミ版は一応、Columbia時代の音源をまとめた(と言ってもデビュー作の音源+αですが)『Blaque by Popular Demand』(2007年)に収録されていますよ。





2012年のナティーナ急死後、ブランディとシャマーリはブラックを再始動させ(ナティーナが亡くなる3ヵ月前にはレフト・アイ没後10年として開催された〈Left Eye Music Festival〉に3人で出演しており、元々リユニオンが計画されていたそうですが)、2013年には“Summertime Riding”を発表。ナティーナを追悼する新作を制作中としていたものの、その後音沙汰が途絶えていました。しかし2016年頃からデュオとして改めて動き始め、昨年には“He Say, She Say”がようやく解禁。そして今年ついに『Torch』が蔵出し……という感じの流れ。

この際ついでに、解禁版『Blaque Out』で省かれてしまった“Questions”なんかや、日本だけで発表された小室哲哉制作の“Adore Me”あたりまで配信してしまえばいいのに。なんて。