2019-05-26

[new music] Steve Lacy, Lucky Daye, Shay Lia + more

・Steve Lacy - 'Apollo XXI' (3qtr/AWAL / 2019-05-24)



ジ・インターネットの最年少メンバーにして、ケンドリック・ラマー、J・コール、マック・ミラー、ソランジュからヴァンパイア・ウィークエンドまでを手がける気鋭プロデューサーとしても活躍中のスティーヴ・レイシーが、21歳の誕生日(前日の5月23日)に合わせて、初のフル・アルバム『Apollo XXI』を発表しました。  Amazon  iTunes

スティーヴ・レイシーと言えば、2017年に発表したソロ・デビューEP『Steve Lacy’s Demos』を始め、自身のプロダクションはiPod touch/iPhone上で録音・制作していることで有名(2017年末にはTEDxTeenでスピーチも)ですが、今回も大半はiPhoneでプロデュースしたのだとか。



基本的にセルフ・プロデュースで、“Playground”ではジェシー・ボイキンス三世(Jesse Boykins III)がソングライティングに関与。また“Like me”にはLAのバンド=デイジー(DAISY)のフロントウーマンであるデイジー・ハメル(Daisy Hamel)をフィーチャーしており、“Amandla's Interlude”ではその名の通り、同年代の女優アマンドラ・ステンバーグ(『ハンガー・ゲーム』など)との会話が使用されています。
アーリー00sのネプチューンズ風な“Guide”、プリンスっぽい“Hate CD”など、これまでの彼らしさもありつつ、“Lay Me Down”あたりではジ・インターネットでも聞かせたメロウネスを発露、かと思うと“Basement Jack”や“Outro Freestyle”ではラップを聞かせ、“Love 2 Fast”ではインディ・ロック的な感触に(歌声を含めるとミゲルっぽくも)なるなど、自身の音楽性をさらに広く打ち出しています。ちなみに最後を飾る“4ever”では、自身が手がけたソランジュの“Exit Scott (interlude)”を使用していますね。

また本作は、事前にi-Dのインタビューでも明かされていたとおり、自身のセクシュアリティ(バイセクシュアル)にも言及した内容になっており、“Like me”ではカミングアウトに対する葛藤を歌っています。



なお、9月6日にRough TradeよりCDとLPが発売される予定で、ボーナストラック付き国内盤も発売予定となっています。





・Lucky Daye - 'Painted' (Keep Cool/RCA / 2019-05-24)



R&B界の大型新人ラッキー・デイがついに初のフル・アルバムとなる『Painted』を発表。  Amazon  iTunes

ラッキー・デイことデイヴィッド・ブラウン(David Brown)は、タイ・ダラー・サインやメアリー・J.ブライジ、アッシャー、トレイ・ソングス、カーターズ(ビヨンセ&ジェイ・Z)らを手がけてきた実力派R&Bプロデューサーであり、最近はH.E.R.、カリードなどのプロデュースも務めたDマイル(Dernst "D'Mile" Emile II)が全面バックアップしている新人。
RCA傘下に立ち上げられ、ノーマーニやヴァンジェスなどを抱える注目レーベルであるKeep Coolに所属する彼は、昨年11月にデビューEP『I』を発表。続けて、ジニュワイン名曲“Pony”のリメイクとも言えそうな換骨奪胎曲“Karma”などを収録するEP『II』を今年2月に発表し、フル・アルバム『Painted』が待たれていましたが、先月発表されたDJ・キャンパー(Darhyl "D.J." Camper, Jr.)制作のソウル・バラード“Love You Too Much”に続いて、ついに『Painted』が到着となりました。

RCAのレーベルメイトでもあるミゲルの『Kaleidoscope Dream』方式のEP分割リリースであったため、『I』、『II』の全9曲はインタールードを含めそのまま収録。これに、“Love You Too Much”を含む4曲が新たに追加されてフル・アルバムという構成になっています。Dマイルがメイン・プロデューサーである構図は変わりませんが、ボッサ調の“Call”はDマイルとDJ・キャンパーによる共同プロデュース。個人的にはアーリー00sのネプチューンズを思わせる“Try Your Fire”が(新曲群の中では)お気に入り。
なお、デビュー曲の“Roll Some Mo”は今年に入って米アダルトR&Bエアプレイ・チャートでじわじわと上昇中で、3月にトップ10入りを果たし、4月20日付チャートで最高8位まで上昇したばかり。現在まで8~10位をキープしており、今週は9位と人気を維持しています。



ニューオーリンズ出身の彼は、2005年のハリケーン・カトリーナ禍によりテキサス州タイラーに家族で移り住むものの、音楽の道を志してアトランタへ。そこでDマイルと出会い、彼に実力を認められてKeep Cool/RCAと契約しました。

なお彼はソングライターとして、ファースト・チョイスの“Dr. Love”ネタとなるメアリー・J.ブライジ“Only Love”や、アディナ・ハワード“Freak Like Me”リメイクなラク・スー“I Want You To Freak”、デバージ“Rhythm Of The Night”リメイクなCNCO “Pretend”などにも関わっています。





・Shay Lia - 'Dangerous' (N.O.T.E/AWAL / 2019-05-24)



ケイトラナダのミューズ的存在としても知られるカナダの注目の女性R&Bシンガー、シェイ・リアが、待望のデビューEP『Dangerous』を発表。  Amazon  iTunes

2017年4月にケイトラナダ(KAYTRANADA)、バッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOD)と発表した“Blue”に加え、今年4月に発表していた“Dangerous”、5月に発表していたバディ(Buddy)参加の“Voodoo”の3曲が既発で、後半4曲が新曲。
英ラッパー、コージェイ・ラディカル(Kojey Radical)参加の“Want You”は盟友ケイトラナダ制作で、グルーヴィンな“Good Together”は、アンダーソン・パークやマック・ミラーなどを手がけてきたポーモ(Pomo)が、ブギー調の“I'll Be There”は、マライア・キャリー“GTFO”やダニエル・シーザー“We Find Love”のコ・プロデュースで知られるジョーダン・マンズウェル(Jordon Manswell)が、そしてスウィート&ソウルフルな“Rock Baby”は、アイゼイア・ラシャドなどを手がけてきたミスター・カーマック(Mr. Carmack)がプロデュースを担当。充実した内容です。





・Adrian Marcel - '98TH' (Third Voice Music Group / 2019-05-24)



ラファエル・サディークのバックアップで2013年にシーンに登場したオークランドの新進R&Bシンガー、エイドリアン・マーセルが、ニュー・アルバム『98TH』を発表しました。  Amazon  iTunes

バーナー作品のプロデューサーとして知られるマックス・ペリー(Max Perry)らと共に手がけた“Slow Burn”、ハイ・ファイヴ名曲“I Like The Way (The Kissing Game)”のサビを借用した“The Way”を含む全15曲を収録。
“The Way”の共同プロデューサーであるキッドジュピター(KiddJupiter)が最多の6曲に関わっているほか、マックス・ペリーが“Slow Burn”以外にも“These Days”など4曲、オークランドの3人組R&Bバンド=ハロー・イエロー(ボーカルは、ラファエル・サディークの甥っ子ディラン・ウィギンス)のメンバー、マーティン・ロドリゲス(Martin Rodrigues)が、“You Know (I Do)”や、デスティニーズ・チャイルド“Cater 2 U”を大胆に拝借した“Automatic”など3曲のプロデュースに参加しています。

なおエイドリアンは、6月29日に米TV Oneで放送予定のボビー・デバージ伝記ドラマ『The Bobby DeBarge Story』(告知映像はこちら)でジェイムズ・デバージ役で出演しています。